ジャガイモ作りは、「植えつけ八分作」と言われています。つまり種イモの植えつけ迄で出来が決まってくるという訳。
当然、ジャガイモを収穫するなら沢取れた方が良いに決まっていますよね。
シャガイモをそこそこ収穫できますが、実は半分も取れていないかもしれません。
この記事では、ジャガイモのサイズコントロールについてお話します。
また、ジャガイモは育て方だけでは、大きさを揃えることはほとんどできないでしょう。
以前からジャガイモの大きさを揃える(整粒化)の技術は、主として栽植密度(特に株間)の調整により行われています。そのジャガイモの栽植密度の秘密についてお話します。
ジャガイモ(男爵)は適地適作だけではない。
一般的なジャガイモの品種「男爵」についてお話します。他の品種では、若干違いがあるので、全ての品種に当てはまる事ではありません。
当たり前な技術
ジャガイモの収量を増やす栽培方法は、ジャガイモの大きくなる時期に光あたりが良く(日照時間と日射量がある)、比較的低温(20℃前後の気候)、適度な雨が当たる事。
かといって茂り過ぎたり、養分不足、水分過不足ではジャガイモの収量が上がりません。シャガイモは天候に左右されやすいのです。
しかし、この環境的な要因もありますが多くの原因がジャガイモを早期に枯死し十分その能力を発揮できていない。
つまり「時期が来たから枯れるのではなく、環境が合わなくなったから枯れる。ジャガイモに適した植え方にしていない。」こともあるのです。
例えば、夏の北海道、秋の九州は日本でも有数のジャガイモ産地です。技術は勿論ですが、ジャガイモにとってふさわしい気候・環境。つまり「適地適作」です。
では、その他の地域ではジャガイモは取れないのでしょうか?いえいえ、そんなことはありません。十分とれます。適地として北海道に比べちょっと劣るだけです。
ジャガイモ(男爵)の収量を増やす方法
シャガイモを作る上で重要なのは最初の出芽です。この時にまで、「植えつけ8分作」といわれます。
「植えつけ八分作」とは、シャガイモを植えつけして出芽するまでの育て方次第で、生育の8割が決まってしまうということを意味しています。
単位面積(㎡)当たりのジャガイモの茎の数を決められた数に揃える事。この事について説明していきます。
「ジャガイモの種イモ1個から3~4本出す。条間75㎝、株間は30㎝程度に揃える」
=「1㎡当たりジャガイモの茎が17本」これがとても重要です。
〇ジャガイモは㎡当たりの茎数が増すにつれ、一定まで放物線的に収量が増加します。
〇ジャガイモは㎡当たりの茎数の差異によって、塊茎の重量分布が大きく異なります。
難しい言葉が出ましたが、塊茎(じゃがいもの部分)の重量が収量に影響を及ぼす理由は、1㎡当たり5茎、40本茎数があれば最大の収量を得られる。
しかし、実際には、240g以上の大粒のモノが44%、120g~240gのモノが26%、そして30g以下のモノが5%以下となります。しかし、240g以上はサイズが大きすぎ、内部障害が起きやすいし、また、30g以下の小イモはも規格外です。大きすぎる・小さすぎる49%、約半分が使えなく、事実上、収量が最も低くなるのです。
ジャガイモが取れただけではダメなんですね。
つまり、茎葉が密になれば小玉、素植になれば大玉になる。
ジャガイモの大きさを適正に揃える(整粒化)の技術は、栽植密度(特に株間)の調整により行っています。
つまり、シャガイモの茎が㎡当たり何本あるかによって収量・大きさがすべて決まります。
ジャガイモの大きさをそろえる技術(サイズコントロール)
望むサイズのジャガイモをを沢山収穫することが目的ですが、その為には栽植密度を揃えるのが一番良く、これを「サイズコントロール技術(茎密度管理)」と言います。
サイズコントロールは、肥料を多くあげたり、水を管理したりすることではありません。
これは茎密度(10a当たりの主茎数=種イモ当りの茎数x栽植密度)により10a当りのイモ数をある程度予測することができます。
ここでは主茎を畑に均一に配置(種イモ当りの茎数と株間の均一化)することにより、ジャガイモのサイズを揃え、収量を上げることを狙います。
株あたりのイモ数では、北海道で、約9個、本州以南では、6個とれるのが平均だそうです。
男爵シャガイモで、1㎡当たり規格内の60個取れるのであれば、この記事を見なくて大丈夫です。ほんと(笑)
シャガイモは、家庭菜園でほとんどの方が作れて、何もしなくてもそこそこ取れるのですが、勿体ない。
「収穫したジャガイモが腐る」とは「そうか病」になって肌が汚いとかそういう理由が話題になりやすいですが、ジャガイモが沢山取れたとか少なかったとかは、今年の天候のせいにしてはいないでしょうか。
サイズコントロールの理屈は少し難しいのでスキップして下記事「ジャガイモを収穫を2倍にする方法」をご覧ください。
ジャガイモのサイズコントロール
ジャガイモの面積あたりの最適な茎密度は
栽植密度とジャガイモの塊茎数の関係は以下の表の通り。
茎密度とは、10a当たりのジャガイモの主茎数の事を言い。種イモ当りの茎数×栽植密度により10a当りのイモ数をある程度予測する技術です。
じゃがいもの茎密度(本/10a) | 収穫できる塊茎数(/10a) | ジャガイモのサイズ |
25,000~30,000 | 60,000個以上 | 小 |
15,000~20,000 | 40,00~50,000個 | 中 |
10,000~14,000 | 30,000~40,000個 | 大 |
最適な茎密度は、10アール当たり、サイズが中が多く取れる「15,000~20,000本」の茎が最適です。
具体的には種イモ当たりの茎数を3.5本以上確保し、茎密度(15,000~20,000本)が18,000本以上なるように植付ける(ためにはジャガイモが5,100株/10a=75cmx26cmの株間と条間)数量が決定します。
1㎡当たりのジャガイモ1株あたり茎数3.5本、株数は5.1株が最適。7株が限界の株数となります。
ジャガイモの1株当たりの最適な茎数と収穫できるイモの重量は
文献データによれば、男爵ジャガイモの株の数に対して収穫できるイモの重量の平均は、
茎1本のときのイモ数は5.6個で、平均1個重は180g
茎が2本のときのイモ数は8.1個で、1個重は130g。=2704g
茎3本のときのイモ数は10.4個で、1個重は125g=3900g
茎4本のときのイモ数は13.3個で、1個重は106gの成績を示した。=5639g
また、茎数と株間が均一に配置された畑では、茎密度の高低にかかわらずサイズが揃うことが当然解ります。
この結果からは、茎4本が一番収量を上げているのですが、秀品率から言えば、一番良い茎葉密度は、約3.5本となりました。
男爵の種イモの大きさと株間・栽植密度の関係
この表では、1㎡における茎密度が17本が最適なので、種イモが40gであれば株間30㎝。種イモが60gであれば株間が36~40㎝が最適。
引用:十勝農業試験場・生産研究部資料より
各現場では、種処理や種いもの形態(大きさ、切断等)で種イモ(株)当りの茎数に差があります。これをできるだけ揃えます。
例えば、全粒や50g以上の大きい種イモをHS、浴光処理して植える場合は種イモあたりの茎数は3.7本以上立ちますので、栽植密度は4,500~4,700株/10a(畦幅75cmでは株間27~29cm)と低くします。出庫後に浴光育芽のみの種イモでは茎数が3.5本以下と少なくなり、栽植密度を5,000株/10a以上に高める必要があります。
シャガイモの収穫を2倍にするポイント
あたり前かもしれませんが、1株当たりのジャガイモが大きなイモが取れれば、数は少なくなります。逆に数が多くなれば、イモが小さくなります。
また、シャガイモの数が少ないと巨大で未熟なイモが多くなり収穫日数が短くなります。
これは1茎株のように株あたりのイモ数が少ないと、男爵イモにとって必要な収穫適期を待たずして収穫になります。
本来必要な日数は80日です。ところが、50日で3Ⅼがあるようなイモが発生してしまい、収穫しなければなりません。当然未熟果となります。
ある程度のジャガイモの数がならないなら、ちょど良いイモを収穫することができないと言えます。先に述べた「サイズコントロールと茎密度」です。
ジャガイモの芽を全部活かした方がとってもお得
最終的にジャガイモの種イモの茎数を4本にする。
ジャガイモの芽を引いたりはできますが、足すことはできません。植え方・切り方次第です。
種イモの芽を全部使って、ジャガイモの株当たりの茎を3~4本になった方が断然お得なのはご理解できるでしょう。
また、男爵イモの肥大期を十分に生かさなければなりません。しかも2Ⅼ位のちょうどよい大きさが欲しい。
1株あたりの茎数を4本にするとちょうどよい大きさのジャガイモが取れるという事です。
その理由は、茎当たりのストロンの節数は約13本あります。茎が1本しかないと、その内に成品イモになるのは半分くらいで、しかも大小のばらつきが出ます。競合によって勝負が決まったイモが現れるからですね。
一方で、4茎株は1茎株の4倍あります。茎の競合が加わってイモの数を減らしながら生育していきます。最終的にイモの数は1株茎の2倍くらいで落ち着くとⅬ玉(120g程度)に落ち着き粒揃いが良くなるという訳。
例えば、1茎株の収量600gに対して、4茎株の収量は、2倍の1200gです。また、同じ30㎝の株間で、出芽時期も同じですが、葉面積が1.5倍です。
株あたりの茎数が増加するほど、総収量が増すばかりでなく、1~2株では、巨大粒の発生が多くなります。逆に4茎株ではLMサイズの収量が最大となります。
ジャガイモの種イモの切り方で収量がきまる。
使える芽を全部活かすべきです。ただし大きな種イモ(2L)は損
ジャガイモのタネ芋の大きさです。シャガイモの種イモの重さは「大体20g~200g」と様々です。規格Sサイズ・Mサイズ・Ⅼサイズ・2Ⅼサイズなど。
結構色々あります。これって結構重要で、タネ芋を2つが3つに切って植えるのが一般的です。現在の主流は、Ⅼサイズが多いです。
おススメするジャガイモの大きさはL・M・Sのサイズ。
種イモとしておススメできないシャガイモは2Ⅼ以上もしくはSSサイズです。
実は種イモは小さくなるように、密に植えてわざと小さくできるようにしています。その方が、丸ごと植えれるからです、でも一般的には大きなイモが売られています。
なぜ、その理由は安く仕入れることができるからです。
余り多く販売されていませんが、Sサイズ(40g)このジャガイモ40g以下の種イモをそのまま植えることをおススメします。
小さなものを選ぶその理由はタネ芋の芽の数が大きな種イモとさほど変わらないことです。大きな種イモはそれを3~4つに切るのですから当然、芽は少ないです。
大体10個の芽(ジャガイモのくぼみ)がタネ芋にはついています。小さいものは8個の物もありますが、問題は出方が頂芽の方に集中していることです。また、シャガイモを切って植える場合は、最低4芽ほしいのです。
そうなるとタネ芋に10個芽があっても3分かつした時に芽が3つしかありません。そのすべてが必ず出るわけではない。
野菜には頂芽優勢というものがあります。ジャガイモの芽にもそのような事が起こります。
ジャガイモの頂芽の方
ジャガイモのストロンが付いていた方
これは、シャガイモの種イモのストロン着生部(つまりお尻の部分)すぐそこ場にあるものが一番古い(出芽が出にくい)芽、次に中央部、出やすい芽はストロン着生部の反対側の頂芽に6つ以上芽が集中していることです。
つまり、ストロン近くの芽は、発芽条件がそろっても動かない。大きなタネ芋は損なのです。いわばシャガイモの下半分はタネ芋として不要です。
例えば、ジャガイモの重量が120g~200gのタネ芋を3等分して、上半分は使えますが、下半分は使えない(芽が出ない)
ジャガイモのタネ芋のを大きさは~120g迄の切らないで植えるのがベスト。
種イモを切るなら必ず頂芽を通して切る
植えつけは浴光催芽した全粒タネ芋を使います。理由は株あたりの茎数を4~6本と多くて良い結果を得られるからです。
例えばⅬサイズなら4つ切りにしますが、芽数が4分の1になってしまい、2茎株しか取れません。
よくあるのが頂芽を通さない切断方法をとってしまい、目の動きが悪い1茎株、芽の5茎株以上の多茎株が交互になっている畑を見ることがあります。
このように切断方法を間違えると株ごとに生育がばらつき大きく収量(低収量・低歩合)を落としてしまうのです。
失敗したシャガイモの芽
このような状態は、種イモが箱に入ったままで貯蔵してたことによって発芽したものです。これはシャガイモの種として半分以上使えません。このもやしの芽が茎になることはありません。
1~2茎株が低収量な理由
株数が少なくなればなるほど、シャガイモが大きくなる頃に他のジャガイモの競合にならない為、養分吸収が早い為、大きくなりやすく、シャガイモも巨大で早く収穫することができます。しかし、最も収量が少なくなります。特に九州・四国など早く収穫して出荷したい場合にはあえて1~2茎株にしている場合もあります。
種イモを浴光催芽(よくこうさいが=浴光育芽)で発芽を早め、全ての茎数を出す。
ジャガイモの栽培の最重要と言えます。
欲光催芽したジャガイモ
浴光催芽とは、強い光と低温によって固い芽を作る技術です。これによって、出芽が10日前後早まり、株あたりの茎数を1~2本多くすることができます。
ジャガイモの植えつけ前の平均の気温は10℃以下です。この低温と強い光が強い芽を作ります。この時、光が弱く過湿だと弱い芽になり、植えつけ作業中に、芽が落ちたり(もやし状)、又黒あざ病になりやすいです。
浴光催芽のポイント
①雨の当たらない、光当たりの良い所に購入した種芋を並べる。イモが15㎝以上重ならないように。
②入り口を開け、冷たい外気が入るようにし、室内が20℃を超えないようにする。5℃以下の場合は凍結防止のため、室内人れる。
③1週間に1回イモの上下を入れ替える。
④だんしゃくは25~30日間、メークインは20~25日間必要。
種いものヒートショック(HS)
高温(20℃)と低温を交互に繰り返すことによって早めに発芽を誘発する方法もあります。
ヒートショック処理、エチレン処理は茎数増加の可能性があるとされていますが、私自身したことが無いので、効果が確認することができなかったのでごめんなさい。
ジャガイモの株間30㎝が最大になる
シャガイモの株間・バラツキでの収量を評価する試験結果がありました。
これは、茎密度との関係もあるので株間30㎝とは言葉足らずな言い方にはなりますが理屈ではそうなります。
収量が最大になる茎密度(/㎡)と収量(10a/t)の関係
引用:十勝農業試験場:生産開発部
この表の見方として、男爵イモの大きさの違いはあるが、
茎密度が17本~18本で収量が4.5トンと最大になるという事から。株間30~33㎝が適正であることが解りますね。
株間30㎝以上になればなるほど、減収、中心空洞、褐色心腐の誘発、変形、くずイモ、低でんぷんが発生。
株間30㎝以下になればなるほど、くずイモが多くなります。
ジャガイモ(男爵薯)の大きさを変える栽培方法
M~Lサイズの作り方は浴光育芽処理をした茎数を約3.5本とし、栽植密度を10a当り4,400株(75cmx30cm)とすると茎密度は15,000本となります。
この場合、イモ数は10a当り約40,000個(約9個/株)となり、これらを太らせます。
L~LLサイズの作り方は種イモの出庫を遅らせた生理齢の若い種イモを浴光育芽をごく短期間行い、種イモ当りの茎数を約3本とします。
すると茎密度は12,000~14,000本と低くなり、イモ数は40,000個程度(約8個/株)で、これらを肥大させます。
ジャガイモの雑記
ジャガイモの規格外を減らすし、収穫を一斉にするために農薬がまかれている。
市場で扱われないような3Ⅼが発生します。当然未熟のジャガイモです。また、男爵で50日で収穫ですが、大規模栽培だと、収穫に茎はが邪魔です。
そこで、強制的に茎葉処理除草剤を蒔いて、枯死させてから収穫している所があります。
除草剤は、野菜の生育の障害となる雑草を抑えるために使用しています。そうではなく野菜を早く枯らすことによって生育を止め、農作業の軽減と商品の均一化の為、使用するという事です。
ジャガイモの追肥の方法
イモ肥大期の肥料分は 基肥の残分と地力の養分(天然供給量)により充足されます。基本的には追肥はしません。
追肥をしても速効性の肥料でないと効果が表れにくいです。どうしてもやりたい場合、不足する場合は分肥として施用します。
施用の方法は イモ肥大に利用されるように、 萌芽から開花までの間に必要量をブロードキャスターで茎葉上から1~2回散撒します。
散撒による茎葉の損傷はありません。さらに、降雨の少ない場合においては葉面散布(尿素)もします。
着蕾期には既に、75cmの畦の中ほどまで細根が伸びてきておりますので、茎葉上からの散布で十分です。
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