野菜栽培にビギナーズラックがあるのか?
初めて畑にする場所で初めて新しい品目を栽培したとき、思いもよらず専門農家より、良い品質や多収をあげたことって耳にしたことがありませんか。
「たまたまだろ。」「手が変わったから良かったんだよ。」「明日、雪降るよ 笑」
意味不明……..(>_<)
本当にビギナーズラックだったのでしょうか?
この記事では、野菜作り初心者が、意外と上手に野菜が採れる理由と、同じ様に作っていたのに最近は野菜が全然取れなかった。
これに陥る原因「連作障害」について野菜作りの基本、また経験談も踏まえて分かり易く解説します。
ビギナーズラックの正体とは
結論から言いますとビギナーズラックは存在します。
そのビギナーズラックの理由は「連作障害」と「初心の技術」この2つだと考えます。
今回は「連作障害」についてですが、実は、初心者さんが野菜を上手にできた、プロが作ることができなかった。
この2つが重なって起きた事例を紹介しながら解説します。
その初心者さんのBさんの実績の概要
水田の転作田で畑を始めた。今まで畑を2~3年荒らしていた(耕作放棄地)
他の作物は作った経験があり基本的な農業経験者。
30代男性で大豆づくりを農家の見よう見まねで初めて見た。
結果(2014.10)
Bさんの大豆生産量、10アール当たり290kgの収量と品質が良かった。大豆農家平均10アール当たり100kg
Bさんの大豆づくりも良かったのですが、大豆を作り続けていた農家の方の方が悪くなっていた事がこの結果になりました。
Bさんの良かった事
2~3年畑を休ませていた事。つまり極自然なまっさらな状態の畑になっていた。
大豆農家の悪かった事
大豆を3年間同じ畑で作り、大豆しか生産していなかった為、連作障害になっていた。一般的には輪作する期限は2~3年と言われています。
連作障害の正体
しばらく休ませていたBさんの畑では、作物が作りやすい環境になっていたってこと。専門農家の畑の方が作物が作りにくい畑になっていたことです。
専門家の畑が連作障害になって悪くなっていたのです。
詳しくは連作障害について【土がやせる原因とその対処方法】の記事に具体的にまとめてみました。
連作障害の症状
「昨年は収穫できた収量に今年は届かない」「年々、減ってきた」
「病気が少なかったのに、年々、病気がひどくなってきた」
「元気がないと思っていたら急に枯れてきた」「毎年発生するようになった」
畑が連作障害にも関わらず生産していた事でしょう。
「連作障害」とは、
連作に起因する何らかの理由(主として土壌に関係する理由)により、次第に生育不良となっていく現象を、連作障害という。連作障害のことを忌地、厭地、いや地(いずれも読みは「いやち」)ともいう。
同一作物(同じ科の野菜)を同じ圃場で繰り返しつくり続けることによって生育不良となり、収量が落ちてしまう障害のことです。同じ作物をつくり続けると、土壌の成分バランスが崩れるだけではなく、その作物を好む菌や病害虫の雑草植物の種類が単一化し、密度が高くなるため、微生物に偏りが出てその科特有の病気になりやすいのです。
例をあげて解説
1種類の作物を作ることは、単一の病害虫、単一雑草を同時に作ることです。単一の肥料をやり続けることは土も偏ります。つまり見た目だけでなくすべてが偏った環境になっていきます。
例えば、ナスを畑一面に1,000本作ったとしましょう。
1本のナスにアブラムシ1匹ついたとして10日で30ほど子供を産みます。
30の子供が10日でさらに子供を30産みます。そして40日ほど生きます。その間1万倍に増えます。
それが1000本です。さすがに天敵あるテントウムシやクモも追いつきません。
もう少し、付け足します。
農薬をやってアブラムシを殺虫したとしましょう。しかし、10000匹の内、10匹何らかの原因で死ななかった。
もしくは、ちょっとかかったけど助かったアブラムシが繁殖したらどうでしょう。
その畑では、農薬で死なないアブラムシが次年度大量に発生します。また、そのに住み着いていた、アブラムシを食べる虫がいなくなります。
ただの虫、ただの草が害虫・雑草にかわった瞬間です。
その農薬に強くなっている可能性が考えられませんか?同じことが雑草にも病害にも言えます。
だんだん農薬が効かなくなる、だんだん取りにくい草が生えてくる。だんだん病気がひどくなる、つまり野菜以外の病害虫、雑草の抵抗性がついてきたんですね。
こうなると手が付けられません。
偏ってしまった畑の環境
豊かで複雑な生物の世界が、土の中に存在します。病原菌もセンチュウも害虫も自然の中では数が減ってきます。なくなりはしません。減るのです。作物に害を与えない程度に。
自然にできた林や森を見ればわかります。このようなところに害虫がいるでしょうか。一斉に山が枯れたりするでしょうか。
起こりっこありません。
病原菌や害虫は生まれた時から害虫や病原菌ではなく人間が勝手に作ってしまった悪口です。
畑一面大根、ジャガイモ、区画整理された水田風景の状態が不自然で人間が作り出したからです。このような状況は自然界には存在しないのです。
自然は環境に見合った多種多様な生物が存在する所です。
畑も田んぼも人間が作った自然なんですよ。植える農産物は自然には生えてきません。山も植林して杉やヒノキを植えます。川も治水のため、ダムや堤防。
水田もコメを最大限に生産する環境制御装置です。畑も食料の生産で、同じ野菜を小面積でどれだけ詰め込めるか。
つまり人間に作られた自然です。人間がコントロール(栽培)できるようにしています。
しかし、全くコントロールできないでいます。できるわけありません。
畑を休ませることで自然の姿に回復した、水田から畑にすることでリセットされた状態に畑の環境が少し戻っただけ。
近年、持続可能な農業を聞いたことがあるかと思います。その中に「自然資本」というワード
自然資本とは、人々へ便益をもたらす、再生可能および非再生可能な天然資源(例:植物、動物、空気、水、土、鉱物)のことをさします。つまり、自然環境を社会経済を支える資本のひとつとして位置づけたもの。人的資本と金融資本・社会関係資本を支えるものです。気候変動、人口増加、汚染などで自然が脅かされると、社会や経済も脅かされます。 現在、地球が再生できないほどの速度で自然が消費されています。
自然資本をここでは触れませんが、経済学では、自然も大事な資本です。後世に残す事こそ、現代の使命としたいです。
バランスが崩れる原因は害虫だけではない。
連作することによって、その作物のほしい養分が持ち去られていることが考えられます。トマトを作って片づける時に果実や枝を畑から持ち出して処分することがほとんどだと思います。だって、次の野菜作るのに、残さが残ってすごく邪魔です。しかし、トマトが欲しい要素である養分も一緒に持ち出されていることに有ります。逆に、いらない養分が大量に蓄積されていることになります。
つまり、きれいにすることが逆に作りにくくなっている可能性があるのです。作物を変え、違った要素と養分を必要とする作物を植え、バランスを整えるているのです。
ビギナーズラックを再現【不自然すぎる畑】
圧倒的に不自然な畑をつくて見ました。簡単に画像でご説明します。
四方を水田や道路で囲まれ、前の年まで水田、このような場所だとしたら。
畑の病害虫や土のバランスが真っ白な状態、しかも害虫の侵入経路がありません。
土質にもよりますが排水が良ければ初年度は、農薬いらずです。畑の害虫も肥料も、畑の雑草がゼロです。
これを田畑輪換方式と言います。
田畑輪換(たはたりんかん)方式は、水田⇔畑の交互に利用を行う。最近ではコメ過剰によって畑作も増やさないといけない状況ですので多くなっています。特に新しい技術ではありません。所が近年、連作障害防止、知力増強などの利点を生かす研究がされるようになりました。
この条件であれば、連作障害は、全く心配ありません。このような環境であれば一度限りですが、連作障害に悩まされることがありません。
誤解しないで頂きたいのが、あくまで連作障害だけを考えた案です。
このような不自然な畑を作ることは難しいですから。
まとめ
今回の大豆の結果を考え、今まで大豆を作っている農家の方々は、水田と輪作を組んで大豆を作り、生産量を上げることができました。
逆に初心者の方は、機械化を進め収量も若干下がりましたが安定して生産しています。
ビギナーズラックが、2年目と続くようになると良いですね。
ジャガイモ畑や山間部の棚田の稲作風景とっても美しく素敵だと思います。生産性を最大限に上げ、高品質の農産物が作れる日本の農家は誇りです。
だからこそ、「わかんないけど天気の加減じゃない、連作障害だよ。この畑はだめだね」といは言いたくないです。
畑も少し休み休み行きましょう。
関係ないかもしれませんが、「狭い日本、そんなに急いでどこに行く。一極集中の人間社会!!アブ○○○」かと。
見識ある方が言っていた言葉が思い出されます。「農業は取る事でなく、戻すことである」
考えさせられます。
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