たい肥を畑に入れています。けど、たい肥とはどういった効果があるのでしょうか。
たい肥の効果は、土をフカフカにする団粒化が進み、保肥性・排水性・保水性が高まり、微生物が活発になり、作物が育ちやすい環境になります。
一般的に教科書にはこのように書いてありますよね。
何となく土や野菜にとって良いのかなぁ~
そんな感じですね。
しかし、大量に施したり、使い方を間違えたり、粗悪なたい肥を使うとかえって、畑にとって害となる事が有ります。適量です。
たい肥は、畑に毎年少しづつ入れてあげる事でその効果を最大限に発揮するのです。
この記事では、たい肥とは、どのような物か、その正体を説明し、たい肥ことをできるだけ解り易く詳しく解説します。
具体的には、有機物の種類によって、窒素の使われ方、窒素飢餓、有害物質などに触れていきます。
たい肥とは
たい肥とは、様々な有機物質を原料とし、好気的醗酵によって腐熟させ、成分的に安定し施用に適する性状までに加工したものです。
簡単に言えば、ワラや落ち葉、牛糞、鶏糞、野菜くず等、様々な有機物を、醗酵させて植物が吸収しやすい形にしたもの。
たい肥は土づくり
畑の「土づくり」ことを主に目的としています。抽象的ですが土を育てる事です。
土づくりには有機物が欠かせません。有機物で土を育て、作物がイキイキ育つ環境に仕向けることなんですね。
しかし、有機物を入れる=たい肥を入れるではありません。害になることが多いです。
では、土づくりのために必要なたい肥はどのようなものでなくてはいけないのでしょう。
どのようなたい肥が良いのか
大きく分けるとこの3つ。
・土や野菜にとって有益であること
・土や野菜にとって安全であること
・取り扱いがしやすいこと
当たり前ですが、↑の3つ全てが揃わないといけません。
・土や野菜にとって有効である事とは
具体的には、植物にとって必要な養分を与えることができ、また、土に住むの虫や微生物等、多くの生き物が存在できる環境になる。
また、土の養分バランスを整え、土の緩衝を高め、肥料を保持し、風雨による流出を防ぐ。
また、土の層の空気、水、土壌のバランスを改善し、排水性や保水性を整えること。
・土や野菜にとって安全である事とは
たい肥を散布した時、たい肥が急激に分解し、有害物質が発生しない。また、窒素飢餓を起こさない事。
もちろん、たい肥には有害物質(重金属)や植物の病原菌、雑草のタネを含まない事。
・取り扱い安い事とは
たい肥が取り扱いやすい、つまり、悪臭がしない。適度な水分でべちゃべちゃしてない。病原菌や寄生虫が繁殖しない事。
が求められるたい肥です。
しかし、実際これらの効果を判定方法や検定方法、特に微生物の改善検定方法等、不明確な点が多いのが現状ではないでしょうか。
たい肥について詳しく見ていきましょう。
たい肥は、特殊肥料として表示義務があります。たい肥を成分分析した表示を見てみましょう。
たい肥の成分として殆どが水分と炭素です。その他に窒素、リン酸、カリ、苦土、石灰分という内訳になります。
ここまで表示する必要はありませんが、良質なたい肥として成分分析してあるものを購入する方が良いですよね。
特に堆肥のような、その価値や施用量が必ずしも主成分の含有量のみに依存しない肥料です。
特殊肥料については、品質の保全や公正な取引の確保のための特別な措置を要しないと認められることから、登録や保証票を添付する必要はなく、その生産や輸入にあたっては都道府県知事に届け出ればよいこととなっている。
しかし、特殊肥料のうち、消費者が購入に際し品質を識別することが著しく困難であり、施用上品質を識別することが必要な肥料です。「堆肥」と「動物の排せつ物」について、平成12年10月から、「特殊肥料の品質表示基準」に基づく品質表示が義務づけられた。
たい肥の原材料によって分解速度が違う
たい肥には、原材料によって大きく違いがあります。
有機物をたい肥にして補給するのに、「なんでも良い」わけではありません。
有機物の種類によっては分解しやすいもの。分解しにくいものがあります。
つまり、有機物の分解する速度。
土に入れた有機物が分解するには、微生物でも土の小動物でも生物が増えていく環境がいります。
その餌となる一つが「チッソ」です。微生物が有機物を分解するには必ずチッソが必要なんですね。
有機物にはチッソが含まれています。
ただし、チッソの量が原材料によってさまざま。
チッソをが多いと分解が早く進みます。チッソが少ないと分解が遅くなります。
実際には、たい肥には窒素が出されているのですが、見た目状、有機物が分解に必要な窒素を吸収したり、出したりすることが起こっている風に見えるって事です。
いずれにしても分解が進むにつれ、ゆっくりとチッソ養分が出始めるのです。
C/N比とは
例えば、稲わらだけなら2年程度、おがくずだけだと30年近く分解に時間がかかります。
これを数値化したものがC/N(炭素率)比と言います。炭素とチッソの比率を表わしたものです。
C/N比が高いほど分解しにくく、C/N比が低いほど分解しやすい。
原材料の区分とC/N比
区分 有機質資材 C/N チッソ質資材 下水汚泥 鶏ふん
牛ふん
レンゲ
7.0 5.6
15.8
19.8
繊維質資材 大豆カス もみ殻
稲わら
47.0 74.3
77.6
木質資材 カラ松バーク 杉おがくず
123 636
引用:全国肥料連合会 土づくりと土壌改良材
この表にあるようにチッソ質資材である下水汚泥、鶏ふん、牛ふんなどC/N比が30以下の物は、とても分解しやすい。
繊維質資材である、稲わら、もみ殻はC/N比30~120の範囲にあるようなものは、チッソを添加すると有機物の分解が早くなります。
木質資材は、C/N比が120以上の物は、窒素を添加しても、分解速度が遅いです。
木質資材の中にバークたい肥、つまり、木の皮ですが、おがくずに比べ、分解が早いのはなぜでしょう。
これは分解を早めるために、牛糞、鶏糞を混ぜてたい肥にしているからです。
チッソの多い牛糞、鶏糞が入ることで、より早く分解することができたのでしょう。
もう一つ、木質資材は、湿って水分を含んでいるときはなじみますが、一旦乾燥すると水をはじきます。
使い方としては、土が粘土質の多い所、土がむき出しの斜面など畑以外の基盤整備した斜面、通路等に使います。
畑に入れることはあまりおススメしません。
たい肥と腐植酸と密接な関係
たい肥の効果を語る上で、腐植酸を抜きに語れません。たい肥の中には腐食酸があります。
たい肥の腐植酸とは
腐食酸があることは、土壌の肥料が長持ちし(CEC)、土の微生物の養分補給や環境が良くなります。
つまり、排水性、保水性が良くなり、作物の根が伸びやすい、通気性の良い軟らかな土になります。
具体的には根の成長を促進させる。土の保肥力を高める。
理由は、たい肥に含まれる腐植酸が、植物ホルモンに似た働きをします。
発根を促進させ養分やミネラルの吸収効率が高まります。根は植物にとって重要です。
腐植酸の効果
- 腐植酸はカルシウム(石灰)やマグネシウム(苦土)などの肥料成分の水による流失を防ぎ土壌の保肥力(CEC)を高めるます。
- リン酸の固定化を防止する。リン酸肥料のリン酸の固定化を防ぐとともに、難溶化したリン酸を可溶化して肥効を高めます。
- 土壌微生物の働きを活性化させる。腐植物質の効果によって微生物や菌が活性化し快適に暮らせる条件が整います。
- 植物にとって有用な微生物や菌が多い環境は連作障害を引き起こすフザリウムや病害センチュウを、抑制することが期待できます。
- 団粒構造を促進させます。土の粒子と粒子を結び付ける役割を果たします。連作障害の改善や健康な土の構造になります。
腐植酸とは
腐植物質の1つ。腐植物質とは生物活動に由来し動植物の死骸や、排泄物の有機物を微生物や菌が分解していく過程で残った有機物(糖・炭水化物・タンパク質・脂質などに分類されない物質)がさらに化学的な反応により出来上がった物質です。
具体的には腐植物質はフミン酸のほか、フルボ酸、ヒューミンなど。
しかし、腐植酸のような腐植物質は有機肥料を投入してもすぐに出来るわけではありません。
作物の栽培過程で分解され減少していていきます。そのため生成が分解に追いつかず、土中の腐植酸が不足しがちになります。
定期的に腐植酸を含んだたい肥を土に混ぜ込んで補給する必要があります。
未熟なたい肥を使うと窒素飢餓を起こす?
たい肥は好気的醗酵による腐熟が前提です。つまり、完熟たい肥です。
もし、「生」のまま、あるいはたい肥化が未熟なままで使うとどうなるでしょう?
- 有機態窒素の急激な無機化が起こり、無機化窒素の濃度が高くなります。
- アンモニア態窒素濃度が高くなり、植物の生育障害を起こします。
- 微生物の活動が活発になり過ぎて、酸素が無くなり、植物にとって有害物質が生成されます。
- 易分解性有機物が急激に分解される際、微生物の活動が活発になり、酸素が多量に使われます。
- 酸欠状態になると嫌気性醗酵が行われて、有害物資が作られます。
極端に多様しない限り大丈夫だと思いますが、入れすぎると植物の発芽を阻害したり、生育障害を起こします。
窒素飢餓とは
有機物を土に入れるとチッソを出したり、吸収したりします。
具体的には、微生物の多少によって変わるのですが、未熟な有機物を多くの微生物が活動することに使います。
すると土の窒素分は増加した微生物のエサとして体として取り込まれる為、窒素が少ない有機物だと、チッソが少ない分だけ生物が土からチッソを奪ってしまう。
したがって、窒素の少ない有機物を多量に入れることは、作物に必要なチッソも奪ってしまいます。
つまり植物がチッソを利用できなくなる。
この状態を「窒素飢餓」と言います。
窒素飢餓に陥った野菜は窒素が足らなくて、栄養失調になり黄色く変色します。
しかし、よほどの繊維質の多い「麦、稲ワラ」を未分解の有機物を投入し続ける事をしない限り、微生物の増加は収まるはずです。
それよりも、わら、稲が分解される過程において生育阻害物質の発生が、窒素飢餓が起こったと勘違いしている事の方がおおいかもしれません。
完熟たい肥化することで生育阻害物質は分解されます。
たい肥が生育障害を起こす原因
濃度の濃度障害
チッソが多く含まれている資材(汚泥・家畜ふん)は、とても分解しやすい資材です。
その為、これを生のまま、あるいはたい肥化して未熟なままで、畑にまくと、ふんの中に多量に含まれる分解しやすい有機物が生物によって一気に分解が進む。
これによって、畑の窒素濃度が急激に高まります。
特にアンモニア態窒素の濃度が高まると野菜の生育障害が起こりやすい。
よく見かける、植えつけ後の窒素による下葉が傷む障害と同じです。マルチの下にある有機物が分化し、植穴からアンモニアが揮発して、地上部の葉が枯れる現象。
酸欠
有機物が急激に分解されるということは、微生物が活発に活動していることなので、微生物に必要な酸素が消費されます。
そうなると畑の土が酸素不足の状態「還元状態」になります。
微生物に酸素がいきわたらないと、今度は、酸素を必要としない嫌気性の分解が始まります。
その結果、有機酸などの有害な物質が作られ、発芽を阻害したり、作物の生育を押さえ、生育しないのです。
木は木にかえし、草は草にかえす。
「木は木にかえし、草は草にかえすのだ。」と言うものです。
つまり、果樹のようにゆっくりと育つ永年作物では、ゆっくりと分解する、元々木であったものを有機物として返してやるのが良いという意味です。
稲、麦などの穀類、トマト、キャベツ、ナスなど野菜これらは、みな草です。
だから「草には草を」と言う法則が成り立つのです。
木を分解するキノコ、落ち葉をかじるヤスデ、広葉樹の葉、おがくずを食べるカブトムシの幼虫など、いろんな生物がいて、それぞれに好みがあり、食べたり食べられたりしながら有機物が姿を変え食物連鎖を繰り返して再び土に返っていくのです。
引用:有機農業コツの化学:西村和雄
耕作放棄した畑や田んぼでは、雑草やススキが生え、やがて木が生えてきます。
これは、土に有機物が補給され、土が肥沃になる、自然治癒。
たい肥は、人為的に生物にとって環境を整えてあげること。
毎年毎年の積み重ね。それがたい肥であり、「土づくり」ではないでしょうか。
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