たい肥とは
汚泥類・家畜ふん・食物収穫残差、林産副産物などの有機質資材は、農業にとって有効な資源です。しかし、そのまま使うことができません。
なぜならそのままでは、使えないし、かえって害になる事があります。
安全で安心して使えるように加工したもの
それがたい肥です。
この記事では、牛ふんたい肥の作り方について紹介しています。福井県池田町では、町の生ごみを集め、牛ふんと混ぜてたい肥として町内の生産者を中心に販売しています。
そのたい肥センターで作られるたい肥のポイントをご紹介します。
たい肥のできる仕組みがわかることで、自家用のたい肥を作ることができます。
何となくたい肥を作っていたけど、完熟とはどのようなたい肥でしょう。牛ふんたい肥の作り方を知っておくのも良いと思います。
私は、平成14年からたい肥センターを管理し、たい肥を生産に携わっています。町から出た食品残さ、つまり「生ごみ」を回収して牛ふんと混ぜてたい肥化したもの。
その名は
土魂壌!!
牛ふんたい肥を作りましょう。
今回ご紹介する、牛ふんたい肥は、「都市ごみコンポストたい肥、拭みこみたい肥は、わらたい肥」と性質が似ているため、同じように畑にまくことができます。
自分の畑でたい肥を作ってみてはいかがでしょう。
材料の有機物を用意すれば、庭先やベランダの限られたスペースでもコンポストで手軽に作ることができます。一般ごみとして捨ててしまう野菜くずの再利用にもなりますし、環境にやさしい資材ですね。
牛ふんたい肥の作り方
たい肥を作る工程は大きく分けて3つあります。
①物理性の改善「有機物の栄養バランス・水分・酸素・微生物の増殖する条件を整える事。」
②強制通気「強制的に通気して発酵を促進させてあげる事。」
③品質の判定「たい肥を使ったときに作物にとって安全で、有効あるか確かめる事です。」
有機物のたい肥になる条件を整えてあげさえすれば、自然とたい肥になっていきます。
作り方も簡単です。<(_ _)> もう少し詳しく説明します。
使用するものが牛糞だけになかなか自分で作るということはないかもしれません。
しかし、たい肥になる仕組みとして牛糞堆肥がどのように作られるかを知ることも大事です。
この記事ではたい肥にする資材の分量を掲載していません。
それは皆さんの所にあるもので十分。雑草、落ち葉、トンふん、野菜くず、おから等
地域にあるものを有効に使ってたい肥にする事が、地域にとって良いたい肥になると思います。
①たい肥になる原材料(牛糞)の水分を調整する。
もし牛糞堆肥を作る時に必要なものは、当然のことながら牛ふんです。
しかし、牛ふんに含まれる水分量の比重が多いと牛糞堆肥作りは上手くいきません。牛糞堆肥を作るときには水分を調整することからはじめます。
つまり、①物理性の改善です。
水分調整には「もみ殻」を使います。
牛糞の水分比重の目安としては60%程度というものがひとつの目安としてあります。
たい肥化で重要な部分は原材料の水分です。これを間違えると微生物の活動ができなく発酵が進みません。
水分調整は一般的には60~65%程度が妥当とされています。
触った感じは、やや湿っている、握って形がくずれない程度です。ただし、原材料の種類によって一概には言えません。
水を含んでべちゃべちゃしたような材料なら、稲わら・もみ殻を入れて水分調整してください。
水分量が60%は最初は固まっていつつも手で触ると崩れる程度。水分の比重を減らすためにもみ殻などを牛糞に混ぜます。
雨などに濡れないようにしておきます。あとはしばらく放置して発酵を進めます。
水分60%の牛糞↑
水分を調整するためのもみ殻↑
②醗酵を早める為、たい肥の微生物を増殖を促す。
微生物のエサを入れる「野菜くず」で十分。
微生物を増殖させるには、エサとなるのは窒素と、酸素です。
そのエサとなる分解速度の極めて速い物を入れてあげる。
分解速度の速いものは生ごみ・野菜収穫残さ↑又は、コメぬか等です。
これらは分解速度の速い窒素質資材と言われています。
さらに分解を早める方法
分解を早める為には、原材料が均一に混ざる事が大事。
その為、できるだけ細かく切断する。落ち葉程度の大きさなら問題ありません。
野菜くず、稲わらなどは、10㎝以下にしないといけません。
③強制的に通気する「攪拌・切り返し」
材料の堆積物の表面からある程度の範囲内は自然の空気の流れで、好気的条件が保たれるが、内部は、嫌気的な状況になりやすい。
つまり、酸素を送ると急激に醗酵します。
堆積物の高さが1~2m以上になると内部が発酵せずムラができるので、強制的に送風機などで換気しないといけません。
攪拌・切り返しは、この内部の発酵を均一にし、ムラを無くします。
堆積物の高さが1~2mになると、時間とともに圧がかかり、密になります。
また、空気の流れが悪くなります。
こうならないように、攪拌・切り返しして、再び通気性の良い環境に整えてあげます。
切り返しの頻度は、1週間に1回程度がベストです。
あまり切り返しし過ぎても発酵温度が下がってしまうのですが、私の場合は週3回切り返ししています。
④たい肥化するまでの日数
投入する資材、気温、時期にもよりますが、
約40~60日でたい肥化が完了します。
品質の確認は、専門機関によって数値として調べることができます。しかし販売目的ではないのであれば必要ありません。
たい肥化の目安
①たい肥化されると、たい肥の温度変化がなくなります。
つまり、たい肥の温度が外気温と同じまで下がり、切り返しを行っても発熱しなくなれば完熟したと考えます。
②たい肥化されると有機物の残存率が下がります。容積が減ります。
例えば、見た目で粗大有機物、明らかに野菜くず、稲わら、では無いはずです、粒子は細かく裁断され、かろうじてわかる程度。また、臭気が変わり
ひどく鼻をつくアンモニア臭がなくなります。
③植物が育つ環境になります。
たい肥に植物の種をまき、生育に影響がない、たい肥の中に生育阻害物質あるかどうかを植物が発芽するかどうかで調べる方法が今も取られています。
種まき試験の方法
たい肥から抽出した水溶液で小松菜の種子をまき試験します。その時の発芽率を調査します。
有害物質があれば発芽を抑制し、発芽率が落ちるという訳です。
たい肥はどのように起こるのか?
有機物が生物(微生物など)の働きによって分解されて、最終的には植物が育つための養分、繊維質、無機物などに変わっていきます。
有機物が土に変わっていくといった方がわかりやすいかも知れません。
たい肥が分解する物によって微生物も変化する
たい肥化になる過程での微生物の変化*たい肥現物1g当たりの菌数
微生物 最初の温度→ 中温段階(40℃以下)→ 高温段階(40~70℃)→ 中温段階(40℃以下) 細菌(中温性) 10⁸ 10⁶ 10¹¹ 細菌(好熱性) 10⁴ 10⁸ 10⁷ 放線菌(好熱性) 10⁴ 10⁸ 10⁵ 糸状菌(中温性) 10⁶ 0 10⁵ 糸状菌(好熱性) 10³ 10⁷ 10⁶ 土作りと土壌改良資材:全国肥料商連合会(Poncelot.1975)
たい肥化過程の最初の段階は、まず中温性の細菌や糸状菌によって糖、デンプン、たんぱく質が分解されます。
その際、微生物が発生する醗酵熱によって堆積物の温度が上がります。
そして、40℃以上の高温になると好熱性の細菌や糸状菌、放線菌が優勢になって、セルロースやヘミセルロースが分解されます。
堆積物の温度は70~80℃迄上昇し、病原菌、寄生虫、雑草種子までが死滅します。
各成分がほぼ分解されて安定してくると温度が低下し、中温性最近や糸状菌が増えてきます。
この状態になると、悪臭もとれ、たい肥化が終了します。
堆肥の温度変化
実際の現場では、堆積物の温度は急激に上昇します。
70~80℃付近まで達します。その後、温度は次第に低下していきます。
しかし、切り返しして酸素を入れてあげると再び上昇します。
これを繰り返し発熱しなくなれば、たい肥化したという事です。
なぜ、たい肥化しないといけないのか?
粗大有機物はそのままだと害になる事が多い
簡単ですが、そのまま畑に入れることが、植物にとって害になるからです。
しかし、たい肥化すると畑にとって「有益な資材」となります。
緑肥は、植物を生のまま畑にすき込むことで、植物を窒素資材として有効活用します。その場合、モア等で細かく裁断し、天日で乾燥させてからすき込み、後作は、夏場で3~4週間空ける事を推奨しています。
これは、有機物が土壌中にすき込まれると、土壌中の微生物がそれを分解するため多くのチッソを必要とします。
このため、土壌はチッソ飢餓の状態におちいりやすくなり、微生物の働きが悪くなります。
対策として、石灰チッソなどを添加することでチッソ成分を補い分解を早めています。
たい肥の材料
牛ふん
「牛ふん」は発酵処理をしていないので、土と混ぜると発酵分解が始まります。
またアンモニアが含まれているため、微生物が土の中の窒素や酸素を奪う現象が起こります。
植物を植えると植物が弱って枯れてしまいます。
土に混ぜる場合は、乾燥牛ふん、生牛ふん同様家庭菜園初心者が初めて動物質堆肥を使用する際は、完熟した堆肥を選んだ方が良いかもしれませんね。
野菜くず
「野菜くず」や汚泥は窒素を多く含みます。その為、急激に微生物に分解されて、アンモニア濃度が高くなります。
また、酸素が急激に消費されて、酸欠状態となり、嫌気性分解します。
そうなると有機酸等の有害な物質が生成され、発芽を阻害したり作物の生育が悪くなります。
落ち葉、木の皮
木質のもには、作物の生育を阻害する物質が含まれています。特に新しいものは、植物の発芽や生育を抑えてしまいます。
たい肥の原料となる有機物は、1種類ではない場合が多いです。
稲わら、木質資材は、中々分解しにくいものです。分解しやすいようにチッソを多く含んだ野菜くず、汚泥などがチッソが多く分解しやすいものを入れると良いですね。
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