野菜の構造をがわかるととっても楽しい。
「なんで?」「野菜作りは普通にたのしいよ」
だって野菜もちゃんと考えて育っているんだってわかるから。
長い年月をかけて、その土地に合うように進化したんだなって、DNAが覚えているんだなって、実感します。日本の環境で育つようにどのように管理して、トマトのおいしさを最大限引き出したいです。理屈ぽいですが、トマトがいとおしく思えてきますよ。私、やばい人ではありません(笑)
この記事では、トマトの受粉の仕組みについて詳しく掲載しています。トマトがどのようにどのような形で受粉して、トマトの実ができるのか?
トマトの実の成らせ方のポイントまで解ります。もう一つ、トマトの育種の経験から、人工受粉をしてトマトの交配する方法も説明します。
品種改良についてコチラ美味しいトマトはここを見るべき。【品種 初心者】
トマトの受粉ってどのような仕組みか知っていますか。
実のなる野菜はなんでもそうですが、自然と受粉しています。そもそも受粉は、次の世代に強い子孫を残す役割も兼ねています。そこには、風やハチによって花粉がめしべについて受粉する、小学校の理科の授業で習った記憶がありますよね。
そこでトマト育てる農家では受粉作業というものがあるのですが、本当に必要なのでしょうか。
仕組みが解ることで、もっとトマトが好きになると嬉しいです。それでは、トマトの花の受粉について詳しく紐解いていきましょう。
そもそもトマトの受粉って必要なの。
結論を言えばトマトは、勝手に受粉(自家受粉)する植物。しかし、すべて受粉が成功している訳ではない。
トマト栽培では人工受粉したほうが良い作物です。トマトの最初の頃咲いた花は生育にとても大切です。
それは受粉させて確実に実をならせて(着果)調整してあげなければ順調にトマトが長く栽培できないからです。
立派なトマトの花を咲かせることが大前提です。そもそも花が貧弱だと受粉しません。
トマトの受粉は、栄養失調なトマトでは花に受粉能力が無いので、受粉できません。
外で簡単な雨除けやプランター栽培でミニやミディトマト作りでは、着果はあまり気にしなくても最初は問題ないはずです。しかしトマトが成りだした頃からが、貧弱な花になりやすい。
けれどプランターでミニトマトを栽培した経験は誰しもあると思います。そこでトマトが成らなかったことがありますか?ほとんどの方はトマトが成ったはず。
これは、プランターという特殊な環境下(水が制限されている)では、トマト自身がトマトをならせて実をつけタネをできるだけ早く付けたいと考えるからなんです。最初の果実に全エネルギーを集約させます。なので、後半がボロボロかも。
トマトがなる仕組みを順に見ていきましょう。
トマトの花の仕組み
トマトは自家受粉と言って植物の同一の個体のなかで受粉が起こります。
つまり、トマトの1つの花の中に雄しべと雌しべがあって、受粉が起こります。
難しく言えば、1つの両性花のなかで受粉が起る同花受粉といいます。
ちなみに大玉トマトなら時期によりますが受粉後50日頃でトマトの収穫です。
対義語として、他花受粉があります。例えば、かぼちゃやスイカ、きゅうり。おしべとめしべが別々の花の植物の事です。
トマトの受粉は花のどの部分で、どのように行われているのでしょう。
自家受粉だから勝手に受粉するんじゃない?花が咲いたら受粉してあげなくてもトマトがなる?逆に受粉しないとならない?
ミツバチなどの昆虫が受粉している?その真相はいったい。
トマトの着果は、トマトの花は上の図のように茎に近い所から順に先端に向かって花が咲いていきます。一斉には咲きません。
受粉も同じく一斉ではないですから、一斉にトマトが取れるわけではありません。順番に大きくなっていくのです。茎から近い方から順に赤くなっていきますね。
トマトの受粉をミツバチの代わりに人が、振動させ、風を送って受粉した結果!
送風着果実と振動受粉による着果促進効果
この上の調査データーは、3品種でトマトが受粉した状況を棒グラフで表したもの。この試験は6月下旬から8月下旬にかけて、雨よけ栽培で行われました。
右から順に、何もしなかった、風を吹き付けて受粉させた、振動によって受粉させたものを並べています。
品種格差や気温の状況にもよりますが、
何もしなくても20~40%(1房当たり2個)はトマトが成ります。
風や振動で花を揺らすとそれが40~70%(1房当たり2~3個)なります。
薬剤による「ホルモン処理」は90~100%なります。
つまりトマトは自家受粉の植物ですから受粉します。普通はね。
結論、全て受粉できるわけではない。けれど何もしなくても半分程度受粉します。
ミツバチや風の振動で受粉する確立が上がります。
トマトの花の構造
トマトの花の構造からどのように受粉しているのでしょうか。上の図はトマトの花を半分に切った時の画像です。
黄色い花(花弁)の中にある突起のようなものがガク・おしべです。あの内側に「花粉、花糸」その中にめしべ・花柱があります。
どうやって受粉しているのでしょう。
まだわかりにくいですね。上の絵を見ながら解説していきます。
〇花が咲いて来ると花粉の筒の中を通り抜けるように最初は小さく隠れていためしべが伸びてきます。
具体的には花柱が伸びて、花頭が上にせり上がります。
〇めしべが伸びるその時、細い管のようなガクの内側にある花粉をこすりながら、大きく伸びていきます。
その時に受粉します。
上の画像はトマトの花ですね。トマトの花は下を向いて咲いています。
おしべが筒状になって、先端から花頭がちょっと見えてます。
それです。
伸びてきためしべ(花頭)の先端がのぞいてます。つまり、花の中で受粉が起るのです。
受粉のタイミング
〇トマト花の寿命は開花から3日間です。めしべは2日位受粉能力があります。
〇気温が12℃以下、32℃以上では花粉が飛びにくいです。
〇早朝10時までが良いとされています。適温は20~30℃。
トマトを栽培するときの気象条件によってトマトが受粉しない場合があります。
例えば、時期やタイミングによって低温や高温になっりして、ばらつきが発生します。なったり、ならなかったり、これを避けるためには人工受粉が必要となる理由です。
また、めしべとおしべには成熟にずれが生じています。
花粉が出るのが遅いです。花粉が飛ぶころには受粉が終わりかけです。その花粉は近くの先にある花つまり、違う先の花に受粉しているように思います。
更に問題も。
めしべが受粉できる状態でも、おしべにはまだ花粉が作られていない状態にもかかわらず、気温が高いとか、雨で湿気が高いため花粉が生成されても飛ばない事が現場では多々あります。
つまり受粉できない状態が起こりやすい。
受粉のずれ、なぜでしょうね。
私の推測ですが、果房内での他花受粉することで、品種維持のため、環境変化に耐えるため、進化していくため、劣勢遺伝を防くため、他花受粉をわずかに選択しているように思います。だってトマトは人工交配(他花受粉)しますもん。
市販されている種は1代交配で他花受粉によって育成されています。雑種強勢を狙ってます。(下記に記載)
品種改良は交配によって作り出され、ミニトマトと大玉トマトであっても受粉させ、果実を生らせることができます。
ほとんど植物が他花受粉するといってよいでしょう。
中玉(ミディ)トマトの作られた理由。【品種改良とうまいトマト】の記事に品種改良の秘密が詳しく掲載されています。
美味しいトマトはここを見るべき。これがおススメ。【家庭菜園 初心者】
経験談 F1「ハイブリット」品種の作り方
トマトの品種改良した経験です。現在の品種はF1という(交配種)です。○○交配という言葉がタネを買ったら書いてあると思います。
交配種は雑種強勢を利用しています。
雑種強勢とは
ある特定の組合せの両親を交雑した際に、雑種(F1) の個体(子)が優れた形質を示す現象です。 雑種個体は、植物体が大きくなる、ストレスに強くなるなど農業上有用な特徴を持ち、それらのタネの特徴はすべて均一です。F1でのみ、両親よりも優れた能力を発揮できる特徴を利用しています。
トマトで例を挙げるなら、病気に強いトマトとおいしいトマトを掛け合わせると、病気に強くて美味しい、生育がそろうトマトの種(F1)が採れます。その種(F1)を採種(F2)して栽培しても均一な成長はしません。つまり1代限りの現象です。
トマトの人工交配作業の手順。
- 〇トマトのオス株にする品種とメス株にする品種を離れた場所に栽培します。
- 〇メス株は花が咲く前のつぼみの時にガク(おしべ)をピンセットで取り除きます。この時はまだおしべに花粉がありません。
- そして念のため、この作業は1番最初にします。また、ガクほかの花粉がつかないように袋にかけておきます。この作業は慎重にしないとめしべも一緒に取れてしまいます。
- 〇次の日に受粉作業をします。オス株にする品種の花粉を集めます。晴天の8時~10時位が最もよく花粉が取れます。その花粉をシャーレに自家製の振動機を用いて集めていきます。雨除け施設ですが晴天だと取れます。雨の日は花粉が少ないです。その時は次日も花粉を集めます。晴天の時間が一番多く飛ぶといわれています。また、ミツバチも晴天の早朝が活動が活発ですよね。ミツバチの方が良く知ってるね。(;^ω^)
- 〇花粉が取れたら、メス株の品種の受粉作業です。袋を取り、花頭へ花粉を「ちょん」触れるか触れない程度に花粉をつけてあげます。
- 〇そして他の花粉が付かないように袋をかけて交配作業は終わり。後は着果したのを確認し、タネができるのを待ちます。
とっても神経を使う地味で肩の凝る作業を繰り返します。
ナス科であるピーマン・ナスも大体こんな感じです。花もよく似ています。
新しい品種ができる期待感でトマトに実がなるとワクワクしました。
なぜ受粉作業がいるのでしょう
技術的な話になりますが、トマト作りで最も大切なこと
トマトの果房の1段目を着実に結実させること
と、昔から言われています。1段目を確実に結実させることがトマト栽培では大切です。
それが出来れば、トマトの2段目以降も正常に花芽分化し、開花、結実をするサイクルが自然出来上がります。
トマト農業者は、薬剤処理(ホルモン処理)したり、ミツバチを入れたり、花をゆすったりして受粉作業をしているのが、ここまでくるとなんとなくお分かりだと思います。
確実(90~100%)に実を成らせ、良い形のトマトを4個取るサイクルを作るようにしている。
トマトは、第一果房が大事。
果房をそろえたほうが良い。理由は一番花がしっかり着果しないと、トマトはここは子孫を残せない、つまりトマトの花や実の生長=生殖生長がしにくいので、葉や茎を伸ばして自分が生長=(栄養生長)を優先しようと判断し茎葉を伸ばす方向に作用しています。
するとその後の第二花房、第三花房は、実のつきが少ない、「つるぼけ」が起きてしまいます。
トマトは栄養生長と生殖生長が同時に繰り返し行われます。
トマトを成らせるにもバランスが大事
もう一つ、ナス科の植物に共通する着果周期という言葉。トマトもナス科の植物なので着果周期があります。
これは、ナスの育て方。収量をあげる方法と切り戻し【摘芯】で解説しています。簡単に説明すれば
着果周期とは
着果量が多くなると、果実の肥大の為に多くの養分が使用され他のところにまで行きわたらなくなります。
その為、新しく咲く花へまわる養分が不足して、着果量の少ない時期が現れます。果実が収穫されると、再び着果の量が増えだします。
この現象を着果周期と呼びます。管理が悪かったり、収穫果を大きくしすぎたりすると、着果周期は長くなり、収量が減るという事です。
これの程よいバランスを保たなければなりません。
程よいバランス!!
「なんでしょうね」(^^)自分で言っておかしいけど
生長バランスのを整えるのがトマトになります。その第一歩が一番花です。
第一花を咲かせ、着果することでその後の生育が安定します。
トマトの一番花が着果できないと、その後に咲いた花もあまり着果しない傾向が強くなります。栄養生長が過多になると葉や茎の植物の体を作る方に作用し、手がつけられないほど栄養や体、優先になって歯止めが効かなくなります。
これを連続させて長く作ることがトマトの技術ですね。
トマトを成らせる方法の例
① トマトトーン処理(ジベレリン)石原バイオサイエンス 日華
ホルモン剤を用いて強制的に実をつけさせます。種なしブドウと同じ薬品で、トマトにタネが無いことがあるかと思います。そのトマトはホルモン処理して実を成らせたトマトです。有機栽培としては使えません。
②振動受粉(ぶんぶん大助)タキイ種苗
振動機によって花を揺らすことで強制的に受粉させていきます。無農薬栽培にはもってこいですね。
③送風受粉(ブロアー)
送風機で花を揺らします。結構強引(; ・`д・´)
③昆虫によって受粉させる。(マルハナバチ・日本ミツバチ)
これは地域によっては外来種となる、ミツバチが気まぐれな時、高温状態には受粉できない、やや価格が高い。ミツバチが受粉したという付加価値づけができる。
以上です。長文、すみません。
コメント
はじめまして。どなたに聞いたらいいか、わからないのですが、質問です。
家庭菜園のミニトマトですが、黄色の細長いタイプを何十個も収穫しましたが、同じ1本の苗から突然、赤の普通トマトの形の実ができ始めてびっくりしています。
黄色の細長い実と、赤いトマトが同時になっている状態です。
すぐ隣が畑で、そこで普通のトマトを育てているのですが、蜂さんか蝶ちょのいたずらでその花粉と混ざってそうなることってありますか??
子供もとってもびっくりしています。夏休みの研究にしよかなぁと思っています。
もしよろしければお返事いただきたいです。
あんちゃんママさん、はじめまして。見て頂きありがとうございます。私はトマトを育種していましたが基本的に果実の色が受粉によって変わることはありません。種にその遺伝子が引き継いでいれば、その実の種を蒔くと、黄色か赤色のトマトが採れると思います。その現象はとても珍しいと思います。普通そのような色の変化無いです。長年作っていますが赤いミニトマトは、最後まで赤でした。でもそのような事例を聞いたこともあります。
そして100%無いとは言い切れないのが植物の世界です。一般的に緑色・白色→黄色→赤色に変色はあると思いますがどうもお話の感じだと違うようにも。昔栽培されていたトマトは、大きさや色が分かれることは頻繁にあったそうですが、1個体でそのような変化があったのかは私には疑問です。環境等で、どこかで色に関係する遺伝子のスイッチの入り方、入れ替わったのかも知れません。その黄色い卵型トマトから、丸くて赤いミニトマトが栽培中に突然変わることは、とても貴重です。種屋さんはその様な品種はつくれません。是非画像なり、種子、品種なりを保存するなり記録しておくとよいと思います。正確なことは観察だけではわかりませんし、大変珍しい貴重な現象と思われます。もう一度確認できるかどうか、調べてみてもわからない可能性もあります。トマトは基本的にF1交配品種なので、バラつきはほとんど見られません。しかしその種のタネを撒く(F2世代)とバラつきが出てきます。もしかするとそのトマトの苗がF2世代のタネだった、のかもしれません。同じ実のタネから色が違ったバラつきのあるトマトが成るかもしれませんね。
すみません、難しくなってしまって、良いご回答になっていませんね。自由研究としてはメンデルの法則になりますので、解明にはちょっと時間が無いように思います。色の変化を写真に収めたり、食べ比べたり、農協さんで糖度計お借りして測ったり、その記録が楽しいと思います。短い夏休みですが、暑さ等お気をつけ、ご自愛ください。
あんちゃんママさんへ、
追加情報です。少し調べた所、植木鉢で栽培した、水耕栽培(土を使わない栽培方法)でミニトマトを栽培した所、1房に、黄色と赤色のミニトマトがなっている画像、ミニトマトの株が弱っている状況の中、黄色の中に数個赤色のものがありました。土で栽培した所では普通に黄色でした。この事から特別な環境下で置かれた場合、またはトマトが収穫後期の疲れた環境下になってしまった場合に、トマトの変化が見られたのではないでしょうか。面白いですね。