有機質肥料のやっちゃいけない、やり方
全て有機肥料は使い方が難しいから、肥料を徐々に変えていく。
土づくりをしてきたつもりが、土壌分析とほうれん草の野菜の健康診断から窒素が多すぎるとの残念な結果がありました。
肥料がなぜ多くなってしまったのか。有機質肥料を使って畑づくりをしていたのですが、肥料が多いとの分析結果から肥料のやり方が見えました。
この記事では、有機質肥料の特徴を踏まえ、その使い方を解説していきます。栽培している上では何ら問題ない生育をしていますが、有機質肥料ならではの肥料の効き方をしていることが解ります。
残念な結果になることは予想していた。
そうなんです。ある程度はこのような結果になることは予想していました。
このほうれん草を作ったのはビニールハウス内でトマトを20年近く栽培していた場所です。毎年、有機質100%肥料とたい肥を規定量入れていた圃場です。
トマトは肥料が沢山必要ですし、追肥で肥料を施し。もちろん液肥という選択があったのですが、有機質100%の液肥が液肥混入機では目詰まりを起こしてしまうので使いませんでした。なので、有機質肥料を、水に溶かして散布する方法でしていました。またよく乾く畑でしたので、無意識に沢山あげていたのでしょう。
ほうれん草は、窒素肥料に敏感です。野菜の栄養分析して見たものの、やはり数字は正直に現れましたね。
規定量入れたのに、なぜ肥料が多くなったのか。
有機質肥料は皆さんご存じでしょうか?
生物(有機質)を原材料とした肥料でのこと。
農水省の肥料取締法では、魚粉類、動物かす粉末類、骨粉質類、植物油かす類等の動植物質の肥料のことで、一般には、窒素含有率(窒素全量)で評価されています。ちなみにもっと窒素含有量が低いと特殊肥料です。ややこしい。
有機質肥料の成分表(%)平均
肥料 窒素(N) リン酸(P) カリウム(K) なたね油かす 7.5 1.8 2.3 骨粉 4.1 22.3 0 肉粕 8.2 2.2 0 乾燥菌体肥料 6.2 3.3 3.8 出典:施肥の理論と実践
有機質肥料は、一般的に有効成分が非常に低いのが特徴。
また、有機物の分解の速さは、種類によって違います。それは微生物によって分解されるのですが、その資材によって分解される速さがまちまち。
有機質肥料の窒素無機化率(%)
種類 無機化率(%)1週目 無機化率(%)2週目 無機化率(%)4週目 なたね油粕 47.6 58.4 61.3 米ぬか 9.8 20.2 26.4 菌体肥料 49.4 40.9 56.2 水産加工副産肥料 64.8 64.7 75.5 醗酵副産肥料 15.8 18.9 25.4 出典:施肥の理論と実践「全国肥料連合会」*水分最大容水量50%、温度25℃。
よく一般的に耳にする言葉「有機肥料は緩効性肥料だからゆっくりと聞きます。化学肥料は即効性なので早く効きます。」
この表を見る限り窒素含有率が高い肥料程分解速度が速く、米ぬか、醗酵副産肥料ほど遅い。
この試験では、4週間でおよそ半分の窒素が作物に利用される無機質窒素に変化していることが解ります。
実際の畑では、「落ち込みと盛り上がりの波がある」。
有機肥料であれ、ぼかし肥料「早く効かせるために熟成してある有機物」であれ、鶏糞など生に近い状態であれ、乾燥であれ、すぐに年内に分解するものではありません。また、窒素が無いと土壌微生物が増えるのに必要な窒素の量がたりなくなって、周りから窒素を奪うこともあります。
有機物はそんなに一度に分解しない。
有機質肥料有機物はその中に含まれている窒素量をその年に全部は分解しません。
試験では1か月後で約半分という結果。
実際のところ2週間程度では、約75%は、分解せずに土の中に残っています。25%の肥料しか使っていません。たった、25%です。どう考えてもその時には肥料不足です。
ただでさえ、有効な肥料成分が少ないのに。
2年目に同じ分だけ肥料を入れたとします。今年入れた25%の肥料分として効きます。
さらに、昨年に入れた肥料の75%のうち25%が肥料として効いてきます。
化学肥料は1年に100%出し切ります。土に吸着されるのもありますけど、肥料としては無機化と言えます。2年目はありません。
3年目に同じ分だけ肥料を入れたとします。今年入れた25%の肥料、さらに昨年度の残った肥料25%、さらに一昨年の肥料25%が効いてくるという感じです。
窒素過剰が起った原因は、この余剰分がどんどん蓄積してしまったということと推測。
本来なら、雨で窒素が溶け出して、流れてしまうので、ここまで窒素過剰にはならないのですが、ビニールハウスの中という環境では、ことで雨が当たらない事が大きく作用したのでしょう。
有機肥料は、微生物が働くかどうかで決まる。
有機質肥料は、そもそも微生物に分解され、無機質の硝酸態窒素になってこそ、初めて野菜の栄養分として吸収されます。(*例外は、説明は省きますが水稲はアンモニア態窒素で吸収します。)
その微生物が働くには窒素のほか、温度が必要です。
有機物を分解する生物(微生物)は適温は30℃、最低10℃は必要です。土壌小動物はもう少し必要です。
つまり、温度が低い春先や冬には微生物の活動に必要な温度が無く、必要な窒素が有機物から全く分解されず出てきません。
逆に、夏に窒素を流すための冠水が夏場の高温と微生物の反応によって、ほうれん草を作るための有機物質の窒素が過剰にでてしまったと考えられます。
ほうれん草が窒素過剰になってしまった原因だと推測しています。
有機物は使い分ける
〇有機物は地力回復のために使うたい肥、ある意味分解しにくいもの。
〇分解され易くすぐに窒素が出てくるもの。
言い換えれば、土づくりのための有機質を入れ、それでは足りない分の窒素補充の有機質肥料を使い分ける必要があるのです。
有機質肥料の利点
〇肥料の効き目が長持ちして穏やかです。
〇肥料をやり過ぎてしまっても、濃度障害が起きにくいです。
〇土の微生物が活発になり、「土の団粒化」が起こります
〇リン酸の固定防止、リン酸が土に吸着されにくくなり、「リン酸過剰を防げますが限度あり」ただし、化学肥料に比べてなので、やり過ぎると当然障害が出ます。
最初は、化学肥料と有機質肥料をうまく使い分けると良いと思います。
これから有機肥料を使われる方、有機質肥料はこんなにも沢山有ります。宜しければ参考にしてください。
有機肥料のほとんどが、植物から油を搾った残りカスです。また、牛の角や鳥、魚の骨、このような輸入食品残さが多い。
その特質が不明瞭なもの、価格が著しく高い物など様々、吟味することが必要です。
実際、菜種油かす20kgを撒いた時、1年目の土に施される窒素の量は?
「なたね油かす」は窒素成分が4.5%です。肥料袋20㎏に=20,000gのうち4.5%なら、
窒素900g入っている。そのうちの25%が無機化される、実に使える窒素分225gです。残りは持ち越し。
その内、雨に流されず実際使えたのはどれほどなのでしょうか。
まとめ
有機質・有機質肥料は、1年で肥料分を使い切りません。つまり約25%しか分解しません。化学肥料は1年で、すべて分解します。土地の微生物の量、窒素の量、温度や水によって、分解速度が変わります。しかし、次年度の貯金にもなっています。毎年少しづつ減らすのも方法です。
いきなりの方向転換や極端な施肥はやめましょう。
有機物補給と微生物をうまく働かせるための有機肥料を使う事が必要になります。
化学肥料は早く効く。有機質肥料はゆっくり効く。どちらが良いのか?って話題に戻りますが、植物の生育にとってはどちらとも大事だと思います。
植物が欲しいときに必要な分をあげれる使い方をすると良いのですが、
有機質関連の肥料が、たい肥・汚泥肥料、樹皮・家畜糞・食品廃棄物の処理が多いのが事実。これらの農業利用は環境保全型農業・循環型農業の立場から推奨されていますけど、農地にも限りがありますし、今後の研究課題ですね。
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